大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(ネ)127号 判決

証拠を綜合すると控訴人は昭和三三年七月中本件家屋中の玄関及び居間六畳の側壁の一部落剥箇所を修理し費用として金一五、〇〇〇円を支出したこと、昭和三二年六月中本件家屋南側に勝手場を増築し金二五、〇〇〇円の費用を支出したことが認められる。

なお原審における控訴会社代表者は勝手場の増築工事は被控訴人の承諾を得て施行したもので本件家屋を明渡す際は原状に回復するという約定であると供述しているけれども右供述部分は前顕龝山、須藤両証人の証言と対比してたやすく措信出来ず却つて右両名の証言によると控訴人は被控訴人に無断でなしたことが認められる。

そして右側壁の修理費用は本件建物の必要費と謂うべく控訴人は之が費用償還請求権があるわけであるけれども、之と賃料債務とは同時履行の関係に立つものと謂うことが出来ない。けだし賃借人の必要費償還請求権は賃貸人の修繕義務に関係なく賃借人が賃借物件の保存維持に関し必要な費用を支出した場合に取得するものであつて必ずしも賃貸人の修繕義務の不履行を前提とするものではないから賃料債務と履行上の牽連関係がないからである。従つて控訴人は右の側壁修理費用を支出したからといつて賃料債務の履行を拒絶しうるものと謂うことは出来ない。

(鈴木 中村 花渕)

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